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チャンピオンズリーグ決勝リポート | 2003.6.9 | |
長い戦いだった欧州チャンピオンズリーグ。
最後はACミランがユベントスをPK戦の末に破って栄冠を勝ち取りました。
この決勝戦という試合ではいくつもの興味深いポイントがあったので、 そこを少しずつ振り返っていこうと思います。 ポイント1・ユベントスのスタメンとシェフチェンコのポジション ミランがいつものとおりのメンバーとシステムで来たのに対して、ユベントスは モンテーロを左のサイドバックに起用し、カモラネージを右のアウトサイドに入れるという 少し変化させたメンバーで臨みました。そして、この事が少なからず試合に影響を与えました。 リッピの目論見としては、サイド攻撃の少ないミランに対しては中央の守備が重要になると 考えて、変則3バックで臨む腹づもりだったように見受けられます。トゥドールを中心に モンテーロ、フェラーラという強固なストッパー2人を使い、相手の中央突破を食い止めた上で、 逆に自分たちがサイド攻撃を仕掛けるという物だったように思われるのです。 それは、カモラネージのスタメン起用からも明らかですしテュラムを守備のプレッシャーから 開放して右からは厚い攻め、左からはザンブロッタのスピードを活かした速い攻めというのを 狙っていたのでしょう。 一方、アンチェロッティはこの試合でシェフチェンコを右のタッチライン際に張らせ、 ウイング色の強い役割を与えました。この事によって、モンテーロはスピードに対応しきれずに ミランは右からチャンスを作っていけたのです。 準決勝の戦いを見てもわかるように、本来ユベントスというのはウイングがいるチームには 非常に強いのです。ただ、逆に中央突破に対しては意外な脆さを見せます。 それを見越しての策だったのでしょうが、相手にサイド突破と中央突破の両方をこなす シェフチェンコという選手がいたために上手く機能しなかったのです。 ポイント2・ハーフタイムを前にしてのシステム変更 後半開始時にリッピは手を打ちます。切れの無かったカモラネージに代えてコンテを投入。 また、前半途中で負傷したトゥドールの代わりにはビリンデッリが入っています。 ここで見るべきポイントはトゥドールの代わりにユリアーノではなくビリンデッリを起用した という部分なのです。システムを変更しないのであれば、ここはユリアーノが起用されなくては いけません。この段階でリッピはモンテーロを当然中央に戻し、ビリンデッリを左のサイドに 入れています。これによって、ユベントスのディフェンスラインはオーソドックスな4バックに 戻ったわけです。また、ハーフタイムには更に中盤を変更し、3人の中央よりの選手に、 1人のサイドプレーヤーという構成に変化させて、2段階でシステムを変更したのです。 もちろん、トゥドールの負傷が無ければ、後半開始時にカモラネージに代えてビリンデッリを 入れて、トゥドールを中盤に上げるという処置を取っただろう事を想像できます。 ポイント3・ダーヴィッツの故障 後半開始時のシステム変更が功を奏してユベントスがいいペースで試合を進めていましたが、 ここにアクシデントが起きます。この試合で中盤で絶大なる存在感を持っていたダーヴィッツが 負傷してしまったのです。ここまでの段階で、トゥドール、カモラネージといった選手を失い、 コンテも投入してしまった後。こうなると、ベンチにはペッソットしか中盤の選手がいません。 ここでリッピはFWのサラジェタを入れ、デルピエロを中盤に下げるという処置を取ります。 結果論になりますが、この後の動きを見る限りはここでペッソットの経験を買っておけば、 違った結果になったかもしれません。 ポイント4・ミランのシステム変更 後半途中で、ミランはセルジーニョを投入しピルロ、ルイコスタといった選手を下げています。 これは中央突破狙いからサイド突破狙いへと方針を変更したことに他なりません。 上でも述べたように、ユベントスが通常通りのウイングに強い4バックと中盤の構成に 戻していた以上は疑問の残る采配としか言いようがありません。事実、セルジーニョは 大きな見せ場も無く120分を終えています。(120分から先で見せ場を作ったのは また別の話) ポイント5・ロキジュニオールの故障 延長戦に突入した後、途中から入っていたロキジュニオールが故障したことによって、 アンチェロッティはアンブロジーニを右サイドバックに下げて守備を固めます。 これはスペイン人には理解できなくてもイタリア人にとっては当然の処置でしょう。 これによって、ユベントスは勝ち越しのチャンスを得たと言いたいところですが、 この試合で相手との駆け引き以前に自分たちのリズムを完全に失っていたユベントスは 攻めに行かずにPK戦へと決着を持ち込もうとする構えを見せます。これは、かなり 消極的な考え方だったと言わざるを得ません。ここで少なくとも攻めに行く姿勢を見せていれば PK戦での結果も違ったものになっていたかもしれません。 PK戦へ持ち込むことを目的にした時間帯を過ごすと、PKになった事でホッとして かえって集中が切れてしまうというのはよくある事です。ここで多少なりともカウンターを狙う 構えを見せたミランとのメンタリティの差がこのPK戦を決めたのかも知れません。 来シーズンも世界トップレベルの素晴らしい戦いを見せてくれる事を期待して、 今回のコラムを終わります。 |